2024.10.6 高齢者への水分摂取推奨

後期高齢者への水分摂取推奨は慎重であってほしい
 テレビでも、キャスターなどが、特に夏場に、水分摂取を推奨する場面は多い。夜、寝る前に、水を一杯飲むほうが良い、とかの話もある。また、介護施設でも、コップの水分を高齢者が飲み残すと、介護スタッフが、「もう一口飲みましょう」とか「飲み干してください」という場面にも遭遇する。
 一方で、特に夏場、水分とりすぎによると思われる心不全の高齢患者に、毎年、遭遇する。また、夜間頻尿を訴える患者の話をよく聞くと、「(ケアマネジャーなどに)夜寝る前に水を飲むことを推奨されて、飲んでいる」という話だったりする。
 メディアで、熱中症対策で水分をとることの推奨ばかりが放映されるが、水の飲みすぎの害が報道されるのを聞いたことがない。
概して、後期高齢者は軽度の心不全を伴っていると考えてよいと思う。75年以上前に作られた古い心臓を使っているのだから、ある意味、当然である。そして、後期高齢者は、心不全も相まって、少しは足(脚)がむくんでいる人も多いと思う。このような足(脚)のむくみ…体の下部にある余剰の水は、昼間は、立ったり座ったりしているうちは体の下部にあるが、夜間、臥床すると、それが流れてきて体の上の方に来ると、血管に入り、尿を産生するので、夜間、頻尿をきたす可能性がある。加えて、寝る前に、水を飲んだりすると、さらに、夜間尿が多くなる。
 水を飲むということは、血液量を多くするという操作である。血液量が多くなると、心臓が、たくさんの血液を送り出す必要が出るので、心臓が老化している高齢者では、心不全になりやすいのである。というわけで、私は、努力して水を飲むことを避けるように、後期高齢者にお話ししている。
 また、食べ物の6割から7割は水分なので、むやみに水分をとらなくても、食事をしっかりとっていると夏バテしにくいし、熱中症にもなりにくいと考えている。
 こともあろうに、夏場の外来には、「水分とりすぎで食欲が低下した」という患者さんすら、来てしまう始末である。そこで、私は、「しっかり飲む」ことではなく、「しっかり食べる」ことを後期高齢者に推奨している。しばしば、「努めて飲んではいけません。普段通り、しっかりご飯を食べることが熱中症対策です」とお話ししている。          (和田忠志)
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