NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク
第5回全国の集い in 佐倉 2026 東京プレ大会
日時 2026年5月17日(日) 9:00受付~16:00
会場 東京都港区三田3-4-28 聖徳大学三田キャンパス
【鷲山拓男氏講演解説文】
11:30〜12:30 「保健師のためのセミナー」=0歳児虐待死を防ぐ母子保健=
鷲山 拓男氏(とよたまこころの診療所)
について、ご案内します。
鷲山拓男氏は精神科医ですが、社会的困難事例の積極的支援を通じて「0歳児虐待死亡を予防」しようとして活動しています。特に、地方公共団体の保健師や、若年者を支援する支援者たちにぜひ聴講して頂きたい講演です。
児童虐待で圧倒的に最多の死亡はゼロ歳児死亡です。テレビ番組では、ほとんど報道されません。「ニュース」や「児童相談所の活躍を描いたドラマ」でも、乳児ではなく、ある程度成長した子どもの死亡や虐待のみが話題になります。このメディアの報道傾向のために、ゼロ歳児死亡の課題は、医療・福祉関係者でもほとんど知らないのが現状です。
統計をみると、ゼロ歳から17歳までの子ども虐待死亡統計において、
2019(R1)年度 子ども虐待死亡数57、ゼロ歳児死亡数28(49.1%)
2020(R2)年度 子ども虐待死亡数49、ゼロ歳児死亡数32(65.3%)
2021(R3)年度 子ども虐待死亡数50、ゼロ歳児死亡数24(48.0%)
2022(R4)年度 子ども虐待死亡数56、ゼロ歳児死亡数25(44.6%)
2023(R5)年度 子ども虐待死亡数48、ゼロ歳児死亡数33(68.8%)
と、ゼロ歳児死亡が圧倒的に多く、児童虐待での子ども死亡のほぼ半数を占めています。
鷲山拓男氏は、子どもが生まれる前から、ハイリスク妊婦支援を行うことで、「生まれたときには支援が入っている」状態を作り、ゼロ歳児死亡を未然に防ぐ活動をしています。
児童虐待死亡の圧倒的多数を占めるゼロ歳児死亡を予防するためには、「子どもが生まれる前からの母子保健活動」が非常に重要だというのが鷲山氏の持論です。児童相談所を悪く言うわけではありませんが、児童相談所は、制度上妊婦に関わることができないため(これもおかしな制度設計ですが)、児童相談所が関わる前に死亡する嬰児も多いと聞きます。その意味でも、「区市町村の保健師」に、母子保健な活動において、活躍してほしいと、鷲山氏は常々話しています。
「リスクは子どもが生まれる前から分かって」います。過去に支援歴のある母親、一回目の妊娠が20歳未満の母親(二回目以降の年齢は問わない)がハイリスクであることは統計的に分かっています。そのほか、シングルマザーには手厚い支援が必要です。このように子どもがすでに生まれる前から、支援すべき母親は分かっています。
鷲山氏の講演で重要な、いくつかのキーワードがあります。
①キーワード「社会によるネグレクト」
深刻な児童虐待が生じる背景に、「母親の社会的困難」があります。先に述べた支援歴のある母親、20歳前に初回妊娠を迎える母親などは、もともと、成育歴や家庭に大きな課題があったり、精神疾患や発達障害などが背景にあったりします。
母親の母親も若年妊娠だった、自宅内DVや虐待、などなど。。。
そのような背景を持つ若年者を社会が適切に支援しなかった結果が、親による児童虐待である、という認識です。社会の支援の乏しさが児童虐待の根源と鷲山氏は考えます。
また、鷲山氏は、我が国において、高校生などが妊娠した時に学校が退学を推進する(ような態度をみせる)ことにも批判的です。例えば、「米国テキサス州のCPS(Child Protective Services)では、生徒・学生の妊娠では卒業を目標に支援」しますが、このような活動を鷲山氏は推奨しています。社会や学校は本人を見捨てるべきではない、という考えです。
②キーワード「母性神話」
社会の多くの人は、「母親は慈しんで子どもを育てることができるはずだ」という思い込みを持っています。この思い込みを「母性神話」と鷲山氏は呼んでいます。しかし、「うまく子どもを育てられない母親もいる」ということです。その「うまく子どもを育てられない母親」に、「母親だからできるはずだ」「母親なのになぜやらないんだ」という考えで接すると、その母親を追い詰めるだけで、助けになりません。
③キーワード「指導ではなく支援を」
従って、支援者は「母性神話」にしたがって、「母親だからできるはずだ」「母親なのになぜやらないんだ」という発想で「指導」してはいけない、ということです。むしろ、母性神話に基づく指導は「うまく子どもを育てられない母親」には有害ですらあります。鷲山氏は母性神話に基づいて正義感で働く支援者に批判的です。母親に対して必要なのは、指導ではなく支援です。支援者が母親から見て、自分を助けてくれる人だと認識できるとき、母親は支援者を拒否せず、受け入れることができます。
鷲山氏の講演は「若年障害者、妊婦を支援する方々への現場の知恵」に満ちています。また、高齢者、青年以降の障害者、社会的困難事例に関わる支援者にとっても鷲山氏の講演は示唆に富むものがあります。
皆様のご参加をお待ちしています。


